ユニット5:イスラーム経済

 ユニット5では、1970年代に本格的に登場し、近年、急速な成長をとげている現代イスラーム金融の実践と国際的に広がっているそのネットワークを主な研究対象としながら、その実践を支えている理論・思想の検討を通じて、イスラーム経済の特徴の解明をめざします。

【現代イスラーム金融の事例研究】
 一口に現代イスラーム金融といっても、地域・業態によって多様な実践が営まれています。本ユニットでは、そのような現代イスラーム金融の多様性を把握するために、イスラーム経済の国際性やクロス・ボーダー性に着目し、中東地域にとどまらず、東南アジア・南アジア・アフリカ・欧米地域における実態に目を向け、それぞれの地域における政治・社会・経済的背景との関わりの中での現代イスラーム金融の実践のあり方を実証的に明らかにすると同時に、現代イスラーム金融を支える世界的ネットワークにも注目し、地域間の相互関係の分析や地域間比較を通して、現代イスラーム金融の実態を動態的に把握することをめざします。

【世界経済における現代イスラーム金融の位置づけ】
 現代イスラーム金融の急成長によって、世界経済の中で無視することのできないファクターとなってきています。本ユニットでは、オイルマネーとの関係、国際金融におけるプレゼンス、世界経済の安定性への寄与の可能性などを検討することで、現代イスラーム金融が世界経済の中で果たしている役割やその位置づけについて明らかにしていきます。

【イスラーム経済論の探究】
 現代イスラーム金融は、既存の資本主義的な経済システムのオルタナティヴたることを掲げた理論・思想を背景に登場してきました。本ユニットでは、そのような現代イスラーム金融の実践を支える理論や思想を取り上げ、それらの含意を学際的アプローチ(イスラーム学・経済学・地域研究・人類学)によって分析することで、現代イスラーム金融の理論的・思想的特徴を明らかにします。同時に、近代以前のイスラーム経済思想やイスラーム世界における経済実践のあり方についての歴史学や経済史の成果を取り入れながら、イスラーム経済論の構築とその中における現代イスラーム金融の今日的特殊性の解明をめざします。

【日本におけるイスラーム経済研究のインフラ整備と日本独自の研究の国際発信】
 日本におけるイスラーム経済研究および現代イスラーム金融研究はまだ萌芽期にあります。本ユニットでは、欧米語・アラビア語・ペルシア語・ウルドゥー語の関連文献の収集と分析を通じて、研究史や学説史をまとめるとともに、研究に欠かせない様々なインフラ(用語事典、主題年表、原典・主要文献翻訳)を整備します。同時に、世界的な研究潮流にはない、日本独自の視点からの考察(例えば、イスラーム経済論の総合的・多元的な探究はそれに相当します)を行い、積極的に国際発信を行っていきます。


メンバー

ユニットリーダー
・小杉 泰(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 教授、センター長)

ユニットメンバー
・森 伸生(拓殖大学イスラーム研究所 所長)
・サルマ・サイラリー(モーリシャス財務省 経済分析官)
・長岡 慎介(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
・メフブーブ・ウル=ハサン(日本学術振興会 外国人研究員)



→活動記録へ


KIASユニット5/京都大学G-COE「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」共催WS"Islamic Economics Workshop on Regional and Historical Diversities of Islamic Finance"
(2009年11月26日 於京都大学)
発表1:Dr. Noor Inayah Yaakub(UKM-Graduate School of Business, Universiti Kebangsaan Malaysia, Malaysia)"Diversity of Islamic Finance from the Malaysian Perspective"
発表2:Dr. Shinsuke Nagaoka(JSPS at CSEAS, Kyoto University)"Diversity of Islamic Finance from the Middle Eastern Perspective"
発表3:Dr. Wan Kamal Mujani(Faculty of Islamic Studies, Universiti Kebangsaan Malaysia, Malaysia)"Historical Diversity of Islamic Economic System"
報告→

KIAS/京都大学G-COE 「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」と/ダラム大学イスラーム金融プログラム共催国際ワークショップ"Evaluating the Current Practice of Islamic Finance and New Horizon in Islamic Economic Studies"
(2009年7月23-24日 於京都大学)
発表1:Dr. Zurina Shafii (Universiti Sains Islam Malaysia)"Risk Management in Islamic Finance: A Review of Risk Transfer Practices"
発表2:Dr. Shahida Shahimi (Universiti Kebangsaan Malaysia)"Corporate Governance and Risk Management in Islamic Banks"
発表3:Hylmun Izhar (Durham University)"Identifying Operational Risk Exposures in Islamic Banking"
発表4:Rifki Ismal (Durham University)"How Do Islamic Banks Manage Liquidity Risk?"
発表5:Ros Aniza Mohd.Shariff (Durham University)"The Global Banking Crisis: Is There a Total Immunity for Islamic Banking and Finance?"
発表6:Nazim Zaman (Durham University)"Building Human Capital in an Islamic Development Paradigm: Trust and Faith in the Makkan Model"
発表7:Dr. Shinsuke Nagaoka (JSPS, Kyoto University)"Conflict and Coordination between Economic Feasibility and Sharia Legitimacy in Islamic Finance"
発表8:Dr. Mehboob ul-Hassan (JSPS, Kyoto University)"Khurshid Ahmad’s Contribution in Islamic Economics"
発表9:Zulkifli Hasan (Durham University)"Regulatory Framework of Shari’ah Governance System in Malaysia, GCC Countries and the UK"
発表10:Mohd Rahimie Abd Karim (Durham University)"Islamic Investment Vs Unrestrcited Investment: An Unlevel Playing Field?"
発表11:Nobutada Takaiwa (Hitotsubashi University)"Waqf and Trust: A Consideration of Property Arrangements in Islam and the West"
発表12:Shamsiah Bte Abdul Karim (Durham University)"Contemporary Shari’ah Compliant Structuring for the Management and Development of Waqf Assets"
発表13:Suhaili Almaamun (Durham University)"Islamic Estate Planning: Malaysian Experience"
発表14:Muhammad Hakimi (Kyoto University)"Theory of Sharecropping from Islamic Economics Perspectives"
報告→

KIAS/京都大学G-COE「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」/立命館アジア太平洋大学共催国際ワークショップ"International Workshop on Islamic Economics: Islamic Economic System and Divergent Paths of Economic Development"
(2009年2月18日 於京都大学)
発表1:Muhammad Umer Chapra"The Prevailed Financial Crisis and Islamic Finance"
発表2:Saito So"Islamic Finance and Japanese Legal and Economic System"
発表3:NAGAOKA Shinsuke"Towards Analytical Framework of Entanglement of Islamic Economic System and Modern Capitalism"
報告→

KIAS/京都大学G-COE「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」/立命館アジア太平洋大学/(財)国際貿易投資研究共催講演会
(2009年2月16日 於東京ステーションコンファレンス会議室)
発表1:武藤幸治「顧客はイスラム銀行をどうみているかーアンケート調査の結果から」
発表2:Muhammad Umer Chapra"Islamic Finance and the Global Crisis"
報告→
ユニット5/京都大学グローバルCOEプログラム「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」/ダラム大学ダラム・イスラーム金融プログラム(Durham Islamic Finance Programme)共催国際ワークショップ
(2008年7月7~8日 於イギリス・ダラム大学)
タイトル:International Workshop in Islamic Economics, Banking and Finance
報告→
ユニット5  イスラーム経済・国際シンポジウム
(2007年7月23日 於京都大学)
タイトル:Islamic Economics: Theoretical and Practical Perspectives in a Global Context
報告1:Islamic Revival and the Rise of Islamic Banking
報告2:Community Development Financial Institutions: Lessons in Social Banking for the Islamic Financial Industry
報告3:Islamic Economics as an Alternative for the Current Capitalist World Economic System
報告4:Divergence or Convergence? An Overview of Theoretical Discussions in Islamic Finance
報告5:Islamic Capital Markets: Its Relevance and Potential
報告6:Islamic Microfinance: A Missing Component in Islamic Banking
報告7:Islamic Banking in Pakistan: Developments and Transformation
報告→
拓殖大学イスラーム研究所・KIAS 共催 イスラーム銀行・金融研究レポート
(2007 年7 月20 日 於拓殖大学)
報告1:イギリスにおけるイスラーム銀行
報告2:マレーシアにおけるイスラーム銀行
報告3:湾岸(ドバイ)におけるイスラーム金融
報告→
拓殖大学イスラーム研究所・KIAS共催 第5回イスラームセミナー
(2007年7月21日 於拓殖大学)
テーマ:イスラーム銀行・金融の仕組みとその展望:啓典クルアーンの教義に立脚したイスラーム銀行・金融の手法を解明する
報告1:イスラーム金融と日本
報告2:シャリーアの規則とイスラーム銀行の歴史的発展
報告3:イスラーム金融業の成長と現在の進展
報告→
KIASユニット5「イスラーム経済・特別レクチャー」シリーズ
「現代イスラーム金融入門」
(2007年 5月22 日~7 月3 日 於京都大学)
講義内容:"An Introductory Course on Islamic Banking and Finance"
報告→