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Japan-Indonesia Forum on Islamic Ethics, Economics and Governance
(2014年6月21日 於京都大学)
日時:2014年6月21日
場所:京都大学総合研究2号館4階会議室(AA447)
共催:
京都大学イスラーム地域研究センター(KIAS)
京都大学科学研究費基盤研究(A)「グローバル化時代に対応する21世紀型イスラーム学の構築」
【プログラム】
13:00-13:15: Opening Remarks
13:15-14:15: Keynote Lecture
Dr. Nur Indah Riwajanti (Visiting Associate Professor, Kyoto University) "Islamic Microfinance in Indonesia: Development, Challenges and Contribution"
14:30-16:30: Session 1
Hassan Shakeel Shah (Universiti Brunei Darussalam)
"The Role of the Shari'ah Department in the Bank Islam Brunei Darussalam"
Kentaro KAMBARA (Kyoto University)
"Theory and Practice of Rahn (Pawnbroking) in Islamic Finance: Its Characteristics of Brunei Products"
Mari ADACHI (Kyoto University)
"Zakat Practice in Indonesia: Its History and Contemporary Issues"
Khashan Ammar (Kyoto University)
"Riba and Bay'a: Reflections on the Qur'anic Verses, Prophetic Traditions and their Interpretations"
16:45-18:45: Session 2
Shun WATANABE (Kyoto University)
"Historical Turbulence and the Regime Stability of the Hashemite Kingdom of Jordan: A Study on its Internal and External Political Process from the 1967 War to the Black September"
Minako MURANAKA (Kyoto University)
"Arab Uprising and the Unfolding Civil War in Syria"
Fukiko IKEHATA (Kyoto University)
"Amman Message from Jordan: Sunni-Shiite Conflicts and Path to Reconciliation in the Middle East"
Kensuke YAMAMOTO (Kyoto University)
"Judaization Policy and Palestinian Resistance in the Old City of Hebron / al-Khalil"
18:45-19:00: Closing Remarks
本ワークショップは、イスラーム経済の専門家である京都大学客員准教授のNur Indah Riwajanti氏をお迎えし、イスラーム経済などイスラーム世界研究に携わる若手研究者がポスト資本主義社会の世界構築を探ることを目的として開催された。
まず、Nur Indah Riwajanti氏からの基調講演が行われた。インドネシアにおいてイスラームの理念に則ったマイクロファイナンスが着実に成長し、成果を挙げつつあるが、そうしたマイクロファイナンスは専らジャワ地域に限定されたものであり、インドネシア国内他地域における浸透が課題として存することが論じられた。質疑応答ではイスラーム・マイクロファイナンスの発展の方向性や社会への影響力に関する議論が行われた。
第一セッションはイスラーム経済を専門とする若手研究者から4つの発表がなされた。第一の発表では、ブルネイ・ダルサラーム・イスラーム銀行のイスラーム法務部に関する報告が行われた。法務部の構造や役割の分析が行われた後、イスラーム金融の担い手たる法務部の実務家の人材育成に関する課題が提示された。第二の発表では、ブルネイ・ダルサラームにおけるイスラーム金融商品としての質(しち)に関する報告が行われた。質のイスラーム法における位置付けが論じられた後、そのブルネイ・ダルサラームにおける現代的発展が論じられた。第三の発表では、インドネシアにおけるザカート(喜捨)・ファンドに関する報告が行われた。ザカート徴収の担い手に注目しながら、ザカート・ファンドの歴史的発展及び現代的状況が紹介された。第四の発表では、イスラーム法における利子と取引における報告が行われた。イスラーム法の第一の法源である聖クルアーンの記述に注目しながら、利子と取引への解釈の新たな視点が提示された。
第二セッションでは、イスラーム諸国の政治を主な対象とした4つの発表が行われた。第一の発表では、第3次中東戦争後のヨルダン王国の政治的展開に関する報告がなされた。ヨルダン国内の政治状況のみならず、それを取り巻く諸外国との関係から政治変動を理解する必要性が述べられた。第二の発表では、現在なお続くシリア内戦に関する報告がなされた。多角的な視点からシリア内戦の展開が紹介され、その終結に向けた方策を生み出すための視点が論じられた。第三の発表では、中東地域における宗派間対立に関する報告が行われた。ヨルダン国王の発言を手がかりに、宗派間対立の位相を明らかにするとともに、その解決策が議論された。第四の発表では、都市におけるイスラエル・パレスチナ間対立に関する報告が行われた。ユダヤ教・イスラーム両者の聖地であるヘブロン(ハリール)を対象に、イスラエルによるユダヤ化政策とパレスチナ側の抵抗運動が多角的な視点から考察された。
様々な地域、専門分野を対象とした発表が行われたが、そのそれぞれから現代世界の抱える課題が提示され、また質疑応答での中心的争点となった。若手研究者にとって、このワークショップは自らの生きる世界・そして未来への視点を常に意識することの重要性を再確認する機会となった。
(渡邊駿:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)