• International Workshop on Civil Society Organizations in the Middle East and Asia
    (2013年10月2日 於京都大学)


    日時:2013年10月2日
    場所:京都大学総合研究2号館4階大会議室(AA447)
    主催:
    Center for On-Site Education and Research (COSER), Graduate School of Asian and African Area Studies (ASAFAS), Kyoto University
    共催:
    Durham Islamic Finance Doctoral Centre (SGIA & DBS), Durham University, UK
    Center for Islamic Area Studies at Kyoto University (KIAS)
    Grant-in-Aid for Scientific Research (A) "Constructing the Study of Islam Appropriate for the Global Era of the 21st Century" (JSPS, Kyoto University)

    【プログラム】
    11:00-11:15: Opening Remarks
    by Marie SATO (Head of the Organizing Committee, ASAFAS, Kyoto University)

    11:15-12:15: Session 1: Civil Society Organizations in the Middle East I
    Marie SATO (ASAFAS, Kyoto University)
    "Islamic NGOs in the Contemporary Middle East: A Case of Jordan"
    Iyas SALIM (Doshisha University)
    "People 2 People Empowerment Muslim Civil Society in Turkey and its Transnational Development Role in Palestine"

    13:30-15:00: Session 2: Civil Society Organizations in the Middle East II
    Ayaka KURODA (ASAFAS, Kyoto University)
    "Islam and Religious Coexistence in Egypt: Preliminary Discussion"
    Shun WATANABE (ASAFAS, Kyoto University)
    "Authoritarianism, Representation, and Political Participation: An Egyptian Dilemma"
    Kensuke YAMAMOTO (ASAFAS, Kyoto University)
    "Politics of Demography and Palestine Question: A View from al-Khalil / Hebron"

    15:15-16:15: Session 3: Civil Society Organizations: Comparative Perspectives I
    Tomoyuki WATANABE (ASAFAS, Kyoto University)
    "The Role of Intermediate Group and the Social Relationships of Childcare: A Case Study of Integrated Child Development Services in Delhi, India"
    Dr. Maszlee Malik (International Islamic University Malaysia)
    "Islamists' Perspective on Good Governance and Human Rights: Pertubuhan Jamaah Islah Malaysia (JIM)'s involvement in Abolish Internal Security Act (ISA) Movement (Gerakan Mansuhkan ISA), 2000-2012"

    16:30-18:00: Session 4: Civil Society Organizations: Comparative Perspectives II
    Dr. Tawat NOIPOM (Prince of Songkla University)
    "Can Islamic Micro-financing Improve the Lives of the Clients: Evidence from a Non-Muslim Country"
    Dr. Nur Indah RIWAJANTI (State Polytechnic Malang)
    "Exploring the Role of Islamic Microfinance Institution in Poverty Alleviation Through Microenterprises Development, A Case Study of Indonesia"
    Kentaro KAMBARA (ASAFAS, Kyoto University)
    "Islamic Retail Financial Products in Malaysia: Japanese Reflections"

    18:00-18:15 Closing Remarks
    by Dr. Mehmet ASUTAY (Durham University)




 近年、第三セクターや市民社会組織と総称される新しいセクターへの関心が急速に高まっている。市民社会組織の出現とその拡大は、1980年代頃を萌芽期に広くその存在が喚起され、研究が進められてきた。一端には、市民の間で自発的に誕生し組織化された社会団体が大きな役割を果たした東欧の民主化、また、公共サービス需要の多様化が生じたことによる国家財政の危機が挙げられる。一般的に市民社会組織とは、政府、市場、私的領域の間で、主に公益を目的に自発的な行動をとる個人の集団を指す。市民社会やそれに関連する現象を捉える概念はこれまで広く提起され、これらは往々にしてアメリカを中心とする西洋的なバイアスを受けていることが問題とされる。同時に、これら組織を経済社会システムの中心的な構成要素として位置づけていこうとする試みは、近年になってようやく取り組まれ始めたと言わざるを得ない。

   本ワークショップは、中東およびアジア地域で近年その役割が大きくなりつつある市民団体・組織や中間組織を取り上げ、その実態についての地域間比較を行うことを目的とした。西洋的な諸概念に囚われることなく地域を横断的に捉え、中東・アジア地域での市民社会組織を比較検討する。ここでの市民団体組織・中間組織とは、政府主体の組織(政党・国営企業)・親密圏に軸足を置く組織(家族、親族ネットワーク)といったこれまでの公私をめぐる二項対立を乗り越え、よりよい社会の構築をめざす動きをみせる組織のことを指す。具体的には、NGO、ソーシャルビジネス企業、慈善団体、業界組織などを指す。特に、2011年のアラブの春以降、これらの組織の役割に大きな注目が集まってきている中東地域における取り組みについて、政治・経済・社会といった多岐にわたる分野を取り上げて、検討を行なった。佐藤報告では、ヨルダンにおけるイスラーム的NGOの展開を事例に、中東の市民社会組織を検討した。SALIM報告は、トルコを拠点に、パレスチナの特にガザ地区において慈善活動を展開するイスラーム的NGOを考察した。黒田報告は、在野の立場でのイスラーム・他宗教の宗教間対話を重視する法律家についての考察、渡邉報告はアラブの春以降のエジプトの政治動向において重要性がますます高まっている業界団体について論じた。山本報告は、占領抑圧下にあるパレスチナにおいて自律的な慈善活動を行うイスラーム主義組織を取り上げた。

 また、地域間比較として、アジア(南アジア・東南アジア)における市民団体組織、中間組織も取り上げた。具体的には、渡部論文がインドにおける乳幼児支援団体を取り上げ、中間組織としての役割について考察した。タイとインドネシアについて、同国におけるマイクロファイナンス事業団体及びイスラーム金融についてNOIPOM報告及びRIWAJANTI報告がこれを取り上げた。上原報告は、マレーシアにおけるイスラーム型担保融資が取り上げられ、イスラーム金融をめぐる慈善やその社会的貢献が論じられている。

 本ワークショップの開催によって、研究分野をまたいだ国際的な研究交流が可能となっただけでなく、中東およびアジア地域において重要性が高まっているこれらの組織の実態を地域間比較の視座から検討すること出来た。活発な意見交換からは、各国・各地域における市民団体組織・中間組織が新たな可能性を持ち、さらなる研究の進展が望まれることが判明した。各自の地域において研究を進展させることのみならず、他地域の実態から照射することの重要性を本ワークショップにより再認識させられることとなった。本機会を元に、各自今後の研究成果に生かしていくことが必要となるだろう。

(佐藤麻理絵・京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)