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「イスラーム経済とイスラーム法」研究会
(2013年3月15日 於京都大学)
報告者:
「イスラーム金融の国別発展形態と環境要因」
吉田悦章(国際協力銀行参事役、早稲田大学ファイナンス研究センター客員主任研究員)
今回の研究会では、日本におけるイスラーム金融実務の第一人者である国際協力銀行の吉田悦章氏を迎え、イスラーム金融の実践の国際比較とその分析枠組みについて報告、および議論を行った。吉田氏は、世界各国のイスラーム金融の実践の現状を概観した上で、それをムスリム人口割合とGDP当たりの預金残高という2つの指標を用いて、4つのタイプに分類をした。それは、イスラーム金融の実践が非常に活発で世界的なハブとなっている1)コア市場型の実践(例:湾岸諸国、マレーシア)、コア市場に近接しその影響を受け、イスラーム金融の実践が活発になりつつある2)近接地域型(例:インドネシア、湾岸以外の中東諸国)、国際金融センターとしての地位を確立している地域における実践(例:イギリス、シンガポール)としての3)先端金融型、金融市場が未発達でセクター全体の発展とともにイスラーム金融の将来的実践が見込まれる4)不毛地域型、として分類が行われた。その上で、それぞれのタイプにおけるイスラーム金融の実践が抱える問題と将来的な展望が議論された。また、2)近接地域型の事例として、近年、イスラーム金融の実践が活発化しているサブサハラ・アフリカについての現状が紹介された。
吉田氏の報告は、自らの多彩な実務経験にもとづく極めてリアリティーのあるものであり、本報告によって、イスラーム金融の実践をマクロ的な観点から俯瞰する見取り図を示したという点において、非常に有意義なものであったと言える。報告後のディスカッションでは、吉田氏の示した4つのタイプの間の共時的関連性、および4つのタイプの時系列的な推移のあり方について様々な提案がなされ、この分析枠組みをより動態的に捉える方向性が議論された。
(文責:長岡慎介)