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グローバル研究セミナー
(2011年6月29日 於京都大学)
タイトル:「中東政変の最前線の現場から」
日時:6月29日(水)10:00~12:00
会場:京都大学吉田キャンパス 総合研究2号館(旧工学部4号館)4階 談話室(AA437)
発表者1:アントイン・アウン氏(MBCグループ・アルアラビーヤ衛星放送/報道部長兼編集委員)
発表者2:ナージー・アルハラーズィー氏(MBCグループ・アルアラビーヤ衛星放送/報道局シニア・レポーター)
「中東政変の最前線の現場から」と題された本セミナーでは、MBCグループのアラビーヤ衛星放送の、アントイン・アウン報道部長兼編集委員とナージー・アルハラーズィー報道局シニア・レポーターの2氏により、今日のアラブ・メディアにおけるアラビーヤ放送に関する説明と、現在の中東における一連の大規模な政治的な動きのなかで、同放送がいかなる放送戦略を採り行っているかの2点について、報告がおこなわれた。
アラビーヤ放送(以下、アラビーヤと略する)は、ドバイ(UAE)に拠点を置き、2003年にニュース専門チャンネルとして設立された。以後、アラビーヤは、ニュースや時事問題の解説をおこなう24時間放送として、アラブ世界で広範な視聴者層を獲得してきた。現在MBCグループは10の衛星チャンネルから成り立っており、アラビーヤはそのなかの唯一のニュース専門放送である。放送の内容は、具体的には、ニュース放送、時事問題、トークショー、スポーツの4つに分けられ、世界各国に派遣された特派員を合わせておよそ約400名(2009年時点、2011年時点では約470人)のスタッフから構成されている。
つぎに、2011年1月よりはじまったアラブ世界の一連の大規模な政治的な動きの中で、アラビーヤがいかなる放送戦略を採り行っているかについての報告がおこなわれた。とくに今回の報告では、アラビーヤがスマートフォンやインターネットなどの新たなメディアの登場に際して、そうしたメディアをいかに有効に活用しようと試みていたのかが明らかにされた。そこでは、アラビーヤが、ソーシャル・メディアを活用するためのインターネット部門に、テレビ部門に劣らぬ重要性を見いだし、積極的なメディア・広報戦略をおこなっている実態が紹介された。今年の2月4日に開始され、一般市民からのビデオ投稿を受けつける、Ana Ara(I View)などは、開始から2週間の間に約7100を超えるビデオが投稿された。インターネット部門は今後のアラビーヤの核となる事業として位置づけらており、こうした状況は放送と通信との連携・融合が説かれる今日の日本のメディア産業を考えるうえでも大いに参考になると思われる。
本セミナーでは、2氏の報告後、積極的な質疑応答がおこなわれた。以下では、その幾つかを紹介しておきたい。第一に、アラビーヤが国際的なメディア市場において、非アラビア語話者をいかに位置づけているかという質問がなされた。これに対して、Antoine氏は、現在アラビーヤが英語圏やその他の対象とする言語圏のジャーナリストや編集者などを積極的に採用し、国際ニュースの発信源となることを目指していることが述べられた。第二に、アラビーヤが放送をおこなう際に、放送用のアラビア語をだれが、どのような基準で選択しているのかという質問がおこなわれた。これに対して、報告者らからは、アラビーヤ放送ではとくにレバノンで用いられるアラビア語の言い回しが用いられる傾向が強く、言語的な基準を統一するために、自社内に設けられた放送訓練施設にて一定の訓練をうける制度が設けられていることが述べられた。さらに、このほかの質問から、アラビーヤでは男性の職員に比べ、女性の職員の数が多いこと、またそれはアラビーヤが男性視聴者のみならず、女性視聴者に対しても開かれた放送局であることを目指していることに関係していることが述べられた。今日の中東におけるダイナミックな政治的な動きのなかで、大きな役割を果たしてきた放送メディアの当事者を迎え、第一線で活躍するメディア関係者からの貴重な報告を拝聴できた今回のセミナーは、参加者らにとって極めて貴重な機会となった。
アラビーヤ放送(以下、アラビーヤと略する)は、ドバイ(UAE)に拠点を置き、2003年にニュース専門チャンネルとして設立された。以後、アラビーヤは、ニュースや時事問題の解説をおこなう24時間放送として、アラブ世界で広範な視聴者層を獲得してきた。現在MBCグループは10の衛星チャンネルから成り立っており、アラビーヤはそのなかの唯一のニュース専門放送である。放送の内容は、具体的には、ニュース放送、時事問題、トークショー、スポーツの4つに分けられ、世界各国に派遣された特派員を合わせておよそ約400名(2009年時点、2011年時点では約470人)のスタッフから構成されている。
つぎに、2011年1月よりはじまったアラブ世界の一連の大規模な政治的な動きの中で、アラビーヤがいかなる放送戦略を採り行っているかについての報告がおこなわれた。とくに今回の報告では、アラビーヤがスマートフォンやインターネットなどの新たなメディアの登場に際して、そうしたメディアをいかに有効に活用しようと試みていたのかが明らかにされた。そこでは、アラビーヤが、ソーシャル・メディアを活用するためのインターネット部門に、テレビ部門に劣らぬ重要性を見いだし、積極的なメディア・広報戦略をおこなっている実態が紹介された。今年の2月4日に開始され、一般市民からのビデオ投稿を受けつける、Ana Ara(I View)などは、開始から2週間の間に約7100を超えるビデオが投稿された。インターネット部門は今後のアラビーヤの核となる事業として位置づけらており、こうした状況は放送と通信との連携・融合が説かれる今日の日本のメディア産業を考えるうえでも大いに参考になると思われる。
本セミナーでは、2氏の報告後、積極的な質疑応答がおこなわれた。以下では、その幾つかを紹介しておきたい。第一に、アラビーヤが国際的なメディア市場において、非アラビア語話者をいかに位置づけているかという質問がなされた。これに対して、Antoine氏は、現在アラビーヤが英語圏やその他の対象とする言語圏のジャーナリストや編集者などを積極的に採用し、国際ニュースの発信源となることを目指していることが述べられた。第二に、アラビーヤが放送をおこなう際に、放送用のアラビア語をだれが、どのような基準で選択しているのかという質問がおこなわれた。これに対して、報告者らからは、アラビーヤ放送ではとくにレバノンで用いられるアラビア語の言い回しが用いられる傾向が強く、言語的な基準を統一するために、自社内に設けられた放送訓練施設にて一定の訓練をうける制度が設けられていることが述べられた。さらに、このほかの質問から、アラビーヤでは男性の職員に比べ、女性の職員の数が多いこと、またそれはアラビーヤが男性視聴者のみならず、女性視聴者に対しても開かれた放送局であることを目指していることに関係していることが述べられた。今日の中東におけるダイナミックな政治的な動きのなかで、大きな役割を果たしてきた放送メディアの当事者を迎え、第一線で活躍するメディア関係者からの貴重な報告を拝聴できた今回のセミナーは、参加者らにとって極めて貴重な機会となった。
千葉悠志(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)