イスラーム世界研究懇話会 第1回例会 発表者:奥野克巳(京都文教大学) 主題 :「フィールドワークの手法と私のエジプト研究」 日時 :1999年7月24日(土) 15:30〜18:00 会場 :京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科 連環地域論講座 講義室 報告:大庭竜太 |
この日、午後3時より開かれた「設立の会」を経て、「イスラーム世界研究懇話会」が正式に発足した。その記念すべき第1回例会は、長年に渡りエジプトの都市及び農村部を対象としてコミュニティ・スタディーを続けてこられた奥野克巳氏を発表者に迎え、引き続き同じ会場にて行われた。 発表前半部は、主として奥野氏自身の具体的なフィールドワーク体験談にしたがって進められた。途中からは現地の様子を紹介する数々のスライド写真も交えられた。豊富なフィールドワーク経験を持つ氏が、場所の探し方やその維持といった事柄から、他者認識の際に生じる様々な問題に至るまで、フィールドとのかかわり方全般について、その手法をいわば「タネ明かし」して下さる形となり、当日出席した多くの若手研究者(報告者も含まれる)にとっては大変有益な機会となった。 後半部では、氏によるエジプト研究の実際の成果、特にフィールドワークから見えてきた日常世界のなかでの「個人」の位置づけをめぐる諸問題に焦点が合わせられた。氏の主張するところでは、イスラーム社会のなかの「個人」は、「イスラーム」及び「財貨」といった2つの根本的要素から成る、人間どうしの多様なつながりを大いに活用して「自己」を達成しようと積極的に試みており、決してそのなかに埋没して生きているのではない。「自己」は、代替不可能な存在として、「他者」との二者関係における連鎖のなかに置かれているのである。氏は、これを強調するため、アッラーと個々のムスリムとが「契約」を媒介として同じレヴェルに位置する(「イスラーム的知の枠組み」に対する)「イスラーム的実践の枠組み」を提示した。 およそ2時間に渡る発表の後、質疑応答の時間が設けられ、活発な議論が交わされた。なかでも、発表の前半部において提起された「フィールドの老化」に関連して、研究の歴史性・超歴史性にかかわる問題がとりあげられ、多くの参加者がそれぞれの意見を提出した。 その後、コンパ恒例会場に場所を移し、議論はさらに盛り上がった。 |
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